「やりがいをPR」東京五輪のボランティア募集 「やりがい搾取」と呆れの声も
金銭の代わりにやりがいを報酬として与えることで、不当に安い給料や劣悪な環境で働かせる「やりがい搾取」。「お金以上に価値がある」とやりがいを盾にして、労働者の心身を消耗させる行為に批判的な意見は多い。
そんな中、2020年東京オリンピック・パラリンピックのボランティア募集について、組織委員会の発言が話題になっている。
■「やりがいをわかりやすくPRしていく」
3月下旬に公開された募集要項案によれば、1日8時間で合計10日間の活動や、交通費や宿泊費の自己負担などの条件が提案されている。一人ひとりの負担が大きく、気軽に参加できるものではないだろう。奉仕活動というほうがふさわしいという見方もある。当時、ネット上では「ブラックすぎる」「ありえない」と批判的な意見が相次いでいた。
『NHKニュース』によれば、こういった声を受けて、ボランティアのあり方などを有識者が検討する初会合が開かれたという。そこでは、「ボランティアのやりがいをわかりやすくPRしていくことが必要だ」との意見が出たようだ。
組織委員会は、五輪関連のボランティアについて「他では決して得られない感動を体験する貴重な機会となる」と説明しているが、感動体験が何よりの報酬だとわかりやすくアピールしていくとも捉えられかねない。
■やりがいは押し付けられるものではない?
「やりがいPR」について、ネット上では批判的な意見が数多く寄せられた。
やりがいPRってwww
やりがいは自分から感じるもので
押し付けられるものではないだろwwどうなってんだよww— 風見幽太 (@kazaminium) May 22, 2018
こんな話が出るってことは「なんでみんなボランティアやりたがらないん…?オリンピックやで…?」「やりがいPRしようぞ」「おうおう」って会合してる東京都の組織委員会おじさんおばさんももちろん手当なしのボランティアで宿泊なし交通費支給なし、やりがいだけで頑張ってるんですよね?( ˘ω˘ )
— ゆずず (@yuzu0905) May 22, 2018
こども食堂を副代表として運営していく上で多数のボランティアスタッフさんと関わっているけどいつも思うことは「やりがいを求めてボランティアしてる人はいつか折れていなくなる」ということ。募集言葉にやりがいPRは絶対しないよ。
— 44 (@seefour_44) May 22, 2018
東京五輪…条件が問題視されているのにやりがいをPRしていくってどういう発想に至ったらそういう回答が出せるんだ…………(⌒‐⌒)
やりがい搾取甚だしいな…………— 柳一vsきゅうり@除霊バンドP (@yuuichi_555) May 22, 2018
また、お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣も自身のツイッターで
「ボランティアが集まらなーい!」
「よーし、こうなったら『やりがい』をPRしよう!」
「なるほどー!」
……この程度の会議はLINEでやれ
とコメントしている。
■仕事でもっとも重要なのはやりがい?
やりがい搾取による低賃金労働やサービス残業が問題視される昨今。一方で、たしかに「やりがい」が重要なのも事実だろう。
しらべぇ編集部が全国20〜60代の男女1,500名に「仕事における重要なもの」について調査したところ、6割以上が「やりがい」と回答した。給料や勤務時間などの現実的な要素ではなく、自分がどれだけ仕事を頑張れるかという充足感を重視している人が多数のようだ。
また、40代からは約7割となり、60代では8割に近づく。一方で20〜30代では5割と、年代による差も見られた。
7月下旬に正式決定する予定のボランティア募集要項だが、はたしてこのままやりがいだけをアピールすることになるのか。注視したい。